9月28日の公開ゼミ「もうひとつのアルメニア ―ナゴルノカラバフとクルド人の状況についての視察報告」は無事終了しました

金曜日、公開ゼミ「もうひとつのアルメニア ―ナゴルノカラバフとクルド人の状況についての視察報告」は、学内、学外から幅広い参加があり非常に盛り上がりました。報告会は二部構成で行われ、第1部はナゴルノ・カラバフについて、第2部はクルド人について発表がなされました。


第1部ではアルメニアの概略やナゴルノ・カラバフの略史について簡単な解説をした後、現地レポートに入りました。現地を訪れた会員が、アルメニアとナゴルノ・カラバフの間にあるチェックポイントにある、「トルコ製品持ち込み禁止」の張り紙の写真を提示し、観光地でありながらトルコの侵入に警戒される実態が示されました。ナゴルノ・カラバフ紛争の背景として、トルコによるカラバフの民族浄化策謀について説明がありました。アゼルバイジャンはトルコ系民族であり親トルコ国家なので、トルコにとって丁度いい先兵だということです。ナゴルノ・カラバフ紛争については何となく知っていても、紛争の背後にトルコの影があったことに、参加者の方々からは意外だったとの声が上がりました。


第2部では、アルメニア最大の少数民族あるクルド人。アルメニアのクルド人は、エジーディ(ヤジーディ)が大多数であり、ムスリムのクルド人は少数であること、またアルメニア政府はエジーディとクルド人を別民族だとする民族政策を取っていることが解説されました。日本で知られていないエジーディの教義や信仰についても解説した後、現地報告がなされました。馬を模った石像が散乱する墓地の遺跡は、多くの参加者の方の関心を集めました。エジーディ。エジーディもクルド人だと主張する老翁についても紹介されました。参加者の皆様からは、アルメニア政府並びにアルメニア人のエジーディへの対応や感情について、多くのご質問がありました。エジーディが何を拠り所にして民族のアイデンティティを保っているのか。それについて、アルメニア人一般に存在するエジーディへの好感、他のクルド人居住地にあるような同化圧力や政策がないことが指摘されました。中央アジア研究者の方からは、スターリン時代のソ連の民族強制移住政策によりアルメニアから追放されたクルド人、カザフやキルギスに住むクルド人との関連性という興味深いご質問がありました。それについて報告者は、アルメニアにおけるムスリムのクルド人が極端に少ないことを挙げ、当時のアルメニア当局がスターリンを利用して、体よくムスリムを追放したのではないかと述べました。


当日の発表資料はこちらになります!

また配布した資料はこちらです!


TOSMOSは今後とも様々なテーマで、公開ゼミを実施して参ります。次回10月12日(金)は、:角田由紀子氏(医学部入試における女性差別対策弁護団」をお招きし、「医学部入試の女性差別―問題の構造とは?」を開催します。ご参加お待ち申し上げます。

TOSMOS(東京大学現代社会研究会)

TOSMOSとは―「現代社会リテラシー」を育む TOSMOSは、多くの情報が錯綜する現代社会において世間に流されず主体的に価値判断するためのリテラシーを育むことを目指すサークルです。そのために授業やゼミで学ぶ専門的学問内容の枠に収まらない、幅広い教養を身につける活動をしています。

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